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病気のおかげで、いろいろな気づきもありましたね。だって、気づきをしないと、もったいないじゃない? せっかく大変な思いをするのに、それを「こんなふうになってしまって」と愚痴にしていたら、自分にとって損ですから。 私は病気については、「あ、そうきたか」と捉えています。
でも別に、気づかなくたっていいのよ。自分の身になにかが起きたとき、 そこでアップアップする生き方もあると思うの。そして気がついたら、「あらーっ」と棺桶に入っている場合もあるから。それはそれでいいと思いますよ。ただ私はたまたま、自分にとって得なほうの考え方を選んだわけ。
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医療が発達してるから、命は長くなるんだけれど、命の質が悪くてずっと長く寿命が延びても意味がないなあと。私、大事な人にはちゃんと長生きしてもらいたいと思っていたから、何かあるたびにどぎまぎしちゃっていたんですよ、心がね。だけど、今は仮に隣にいた人がパタッと逝っても、「ああ、この時間だったのね」ってぐらいに思える。気楽ですよ。これも成熟のひとつかな。でも、女優としてはどうなんだろう(笑)。女優として胸があいた華やかな服が似合って、寒くもないっていう体づくりは、若いころからしてきませんでしたねえ。残念だけど、それだけはやり残したことです(笑)。
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覚悟っていうのをすると気楽ですよ。覚悟っていうのは、手術をする覚悟とかっていうんじゃなくて、ここまでね、12まで生きられた、で、周りを見回したら、もう私がいなくてもちゃんと生活やっていける人たちがみんな揃ってきたなと。
そしたらば、泣く親もいないし、死んでもいいんだなという。死ぬことができるんだなという覚悟よね。
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だけです。 今、凄く興味を持っているというわけではないんですが、自分の身体を保っていないといけないなと。新しい家を車椅子生活になっても大丈夫なようにとバリアフリーにしたんですけど、車椅子になる前に、飲み過ぎで脳の血管が切れちゃったりしたら、それどころじゃないですからね。だから、自分の身体には責任を持ち、あんまりいい加減な生活はしないようにしようと思っています。長生きしたいと思うわけではないし、年を取るのはちっとも苦ではないんですよ。ただあたふたせずに、淡々と生きて淡々と死んでいきたいなあと思う
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特に意識はしませんでしたが、キャスティングする方や今回の「あん」の原作者・ドリアン助川さんも、私に命を考える気配」を感じるのかもしれないですね。この映画には、「やり残したことは、ありませんか?」というキャッチコピーがついていますが、私自身には、具体的なことでもっとやりたいことや、これから先何かを始めようという思いはまったくないです。もう親もいませんし、娘も自立していますので、2歳になって、納得して『死ぬ資格のある人間」だなと思っています。やり残したことなんて、死んでみないとわからないですよ。あとは今の状況のまま成熟して終了するのであって、新たに「何か」に向かっていくことではないです。