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「要警戒:犬化がまん延している ― 土屋賢二」文春文庫 そしてだれも信じなくなった から

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「要警戒:犬化がまん延している ― 土屋賢二」文春文庫 そしてだれも信じなくなった から

 

最近、ネコが野性味を失って飼い主に依存し、犬のように呼べば返事をし、芸までするらしい。ネコの犬化が始まっているというのだ。耳を疑う話だが、この情報は学術的調査の結果だということを、初対面の人から教わった。わたしのもっている情報の中では最も信頼できるAランクに入る(ランクはZまである)。 ネコは、呼んでも聞こえないふりをする。「聞こえたろ。ちゃんと返事しろ」と叱られたことがないのだ。エサを見せても無視して歩き回り、ふと気づいたような演技をしなければ食べに来ない。「いらないならやらない!」と言われたことがないのだ。そんな小芝居をしてでも飼い主の言うなりになるのを嫌がる動物だ。 その野性味をネコが失うとは考えたくもない事態だ。野性味がなければネコの魅力は半減し、美女の十倍ほどしか魅力がなくなってしまう。ネコが野性味を失うぐらいなら、蚊や蜂から針を抜き、ハモから小骨を、バラからトゲを抜き、牛肉の脂肪から健康に悪い成分を取り除いてもらいたい。 犬化といえば、さらに憂慮すべきことが起こっている。男も犬化しているのだ。犬化といっても、男が本当に犬になるのなら歓迎されるところだが、犬のようにかわいくなるわけでも、ドッグフードで満足するわけ でもない。たんに女に依存し、女の顔色ばかりうかがうようになっているのだ。若い男は女の機嫌をとろうと、プレセントを欠かさず、こまめに連絡し、結婚にこぎつけたら披露宴で泣く始末だ。それがどれほど女をつけあがらせといるか分かっているのか。そのためにわれわれ一般の男が「やさしさが足りない」と責められているのを知っているのか。

いざというとき、身を挺して家族を守り、国を守る、それが男の愛情だ。奢侈に流れ、着飾って女に取り入ってどうする。どんなに機嫌をとっても、「ハゲだ」「腹が出た」と責められ、邪魔者扱いされるのだ。 野性的な素浪人、荒野の一匹狼などはいまや映画にすらならない。男くさい俳優はおらず、エステに通い、脱毛し、女の気に入られようとするヤサ男ばかりだ。 男なら外見にかまうな。貯金もするな。家事も手伝うな。そうすれば家族に見捨てられるだろう。女から総スカンを食らうだろう。それが怖くていい夫になってどうする。それでも武士か。たから見ろ武士になれていないだろう。 ダイエットも軽蔑しろ。デブになろうが糖尿病になろうが痛風になろうが恐れるな。人間、何かにはならなきゃいけないのだ。 貯金がなければ、はやりの服も買えず、おいしいものも食べられず、病気になっても治療を受けられず、野垂れ死にするだろうが、いたるところ青山あり、高級羽根布団の上で死のうが、ジメジメした路地裏で行き倒れになろうが、気にするな。これから寝るわけではないのだ。布団など無用だ。することはただ一つ、死ぬことだけだ。 現在、女たちは「イケダン」(イケてるダンナ)ということばまで作り、仕事もバリバリ、高収入で家事も育児もこなし、おしゃれな無精ヒゲに最新ファッションの男を称揚しているが、女の妄想に踊らされるな。女の妄想も身勝手きわまるが、驚くなよ。男の妄想力は生やさしくないのだ。 男を大事にして、家事もさせず、男の外見にも内面にもこだわらず、尊敬するところがなくても男を尊敬する女、それこそわれわれにふさわしい女だ。男たちよ、そういう女しか相手にしない、と声高らかに宣言しようではないか。 だが情けないことに、抜け駆けをして女に取り入ろうとする男が必ず出る。もっと残念なことに、その先頭を切るのはわたしだ。


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