「離別、死別・・・パートナーがいない中高年こそ、マスターベーションを ― 富永喜代」女医が導く60歳からのセックス 扶桑社新書 から
人生においてセックスをするパートナーがいることはとても素晴らしいことですが、年齢を重ねるほど、パートナーとの離別や死別など「別れ」が現実的になります。
内閣府の調査『男女共同参画白書令和4年版』によると、「配偶者、恋人はいない(未婚)」との回答は、男女ともに全世代で2割以上、50代では26・7%、60代では21・5%でした・
今や「3組に1組は離婚する」ともいわれる時代です。
先に挙げた内閣府の調査でも2015年以降、離婚件数は毎年約20万件で推移し、離婚件数は婚姻件数の約3分の1となっています。中高年でいえば、50代男性の13・3%は離婚経験があり、内訳として「現在は配偶者がいる人」が5・9%、「現在は独身の人」が7・4%でした。60代の男性に関していえば、12・9%は離婚経験があり、そのうち「現在は配偶者がいる人」が5・0%、「現在は独身の人」が7・8%です。
身近に肌の触れ合いを求められるパートナーの不在は、スキンハンガーにつながります。親しい人との触れ合いを失い、迫りくる老いや死の不安に苛まれていく・・・そんなとき、不安を解消するために欠かせないのが「オキシトシン」でした。
では、どうやって一人でオキシトシンを分泌させればいいのでしょうか?答えはマスターベーション、つまりオナニーにあります。
マスターベーション関連グッズで有名なTENGAによるインターネット調査によれば、男女ともにマスターベーションをする理由にについて、約3人に1人が「ストレス解消のため」と回答しています。女性に関していえば、就寝前にマスターベーションを行う理由は「眠りを助けるため」と答えた人が約4人に1人という結果になりました。マスターベーションは、ストレス発散や不眠解消につながることがわかります。
実際、マスターベーションでオーガズムを得ると、大量のオキシトシンが分泌され、不安な気持ちが低下し、緊張が緩和され、ストレス解消に直結します。さらにセロトニンも分泌され、眠気と覚醒のリズムを整えるメラトニンも分泌されます。また、β―エンドルフィンという脳内麻薬も分泌されます。このβ―エンドルフィンには、モルヒネの6・5倍もの鎮痛・鎮静作用があるといわれています。
身近なパートナーがいないときは、まずマスターベーションをしてみてください。なかには、「夜一人でオナニーなんて、余計寂しくなるだけじゃないか」と感じる人もいるかもしれません。
ここで思い出してほしいのが、第一章でお話しした「性機能維持としてのマスターベーション」という概念です。
マスターベーションを定期的にすることで、ペニスの海綿体の血流を促し、組織の線維化を防ぎます。また、単に勃起するだけでなく最後まで射精することで、精液の一部である前立腺液を前立腺でつくり、精液を体外に出すための骨盤底筋を鍛えることにつながります。
特に前立腺は、加齢により異常をきたしやすい臓器です。前にお話ししたように月21回以上の射精で前立腺がんのリスクが2割減少するという研究もあり、マスターベーションは健康と長寿をもたらします。
不安や孤独感を覚えたら、眠る前にマスターベーションをしましょう。マスターベーションをして、オキシトシンを分泌させ、ぐっすり眠ること。これなら誰にも迷惑をかけず、お金もかかりません。心身ともに健やかに保ち、精力的に生きるためのマスターベーションに罪悪感を抱く必要はありません。ぜひ今日からは、多いに楽しみながら行ってみてください。