「青色申告承認取消処分と憲法31条の法意 - 京都大学教授 原田大樹」法学教室2024年9月号
最高裁令和6年5月7日第三小法廷判決
■論点 法人税法の青色申告承認取消処分が、事前手続を保障していないことが憲法31条の法意に反するか。 〔参考条文〕憲31条、法税127条、税通74条の14第1項
【事件の概要】 法人税法の青色申告の承認を受けていたXは、税理士法人Aを税務代理人としていた。Aは平成30年6月期と令和元年6月期の法人税確定申告書を続けて期限内に提出しなかった。そこで税務署長は、法人税法127条1項4号に基づき、Xの青色申告承認を取り消した。Xはこれを不服として取消訴訟を提起し、裁量権の逸脱・濫用、理由提示の不備のほか、国税通則法74条の14第1項により行政手続法が適用除外されていることで事前に防御の機会が与えられなかったことが憲法31条に違反すると主張した。第1審(福岡地判令和4・12・14)・控訴審(令和5・6・30)ともにXの主張を認めず、Xが上告。
【判旨】 〈上告棄却〉 「法人税法127条1項の規定による青色申告の承認の取消処分については、その処分により制限を受ける権利利益の内容、性質等に照らし、その相手方に事前に防御の機会が与えられなかったからといって、憲法31条の法意に反するものとはいえない。このことは、最高裁昭和61年(行ツ)第11号平成4年7月1日大法廷判決・民集46巻5号437頁の趣旨に徴して明らかである。」