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(巻四十一)立読抜盗句歌集

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(巻四十一)立読抜盗句歌集

 

山笑ふたしかに吾を見て笑ふ(億みき)

良き知らせ一言で足り春の星(笠原みわ子)

惜春のRの舌の置きどころ(末兼友子)
水飯や腹の教えし腹八分(角光雄)

三島忌やパンタグラフの火花散(涼)
虫の音の鎖つながる町の縁[へり](奥山公子)
手配書と並んで待てる梅雨のバス(森岡正作)
齢に合ふ柄多からず更衣(陳妹蓉)
傘といふ独りの宇宙梅雨に入る(有松洋子)
遠山に日の当たりたる枯野かな(高浜虚子)
列車の灯糸引きて去る緑雨かな(生駒大祐)
日おもてに現れにけり桜守(岸本尚毅)
老人と老人のゐる寒さかな(今井杏太郎)

明日ありやあり外套のボロちぎる(秋元不死男)

秋高くおだやかな死を給ふなり(浦川聡子)

缶切と栓抜錆びし盆用意(斎藤朝比古)
様々な書物に書かれたる晩夏(冨田拓也)
秘め事は我に重しや豆名月(小川晴子)
無になりて身を預けたし大花野(小川晴子)
わたくしの溶けてゆがみて花氷(石地まゆみ)
角打ちの隅に犬座す夕薄暑(和田桃)
港町ホテルのバーの蠅叩(橋本栄治)
救う気で掬う夜市の屑金魚(西村克彦)
鯊釣りやひとりが楽しそうな人(引地こうじ)
浮きにくき水新しきプールかな(柿沼盟子)
不揃ひの苺を潰す怒り肩(上谷昌憲)
吊り革の手首の細し更衣(宮内とし子)
春明るく髪に寝癖を賜りぬ(池田澄子)
身に入むや息を殺して老いに入る(をがはまなぶ)
身に入むや電車の中の喪服連れ(荒井久雄)
秋思ふゆきつくところ死を思ふ(縣展子)
流星に占ふこともなかりけり(中村幸平)
日記書き己戒しむ秋夜かな(高田菲路)
炊飯器秋が深むと置かれあり(手塚美佐)
耳鳴りの耳振つて聴く時雨かな(小出恋)
区役所の向日葵咲かせお・も・て・な・し(光成敏子)
指先に老いのあつまる青葡萄(亀田虎童子)
目をやすめ耳をやすめて夜の秋(神尾久美子)
日の落ちて月の花野となりにけり(杉山一川)
死ぬ死ぬと云つて死なざるむかご飯(岩熊史城)
秋風や夏より広き野球場(寺本章)
以外にも不仲の父母が晩年はひとつの墓に入るを拒まず(岡山礼子)
物流の果ての渚を歩む蟹(福田若之)
湯を注ぐだけの味噌汁もう立冬(五代儀幹雄)
徒[あだ]し世や桜落葉の裏表(^^)
人生を以下省略の涼しさよ(藺草慶子)
小銭とか純喫茶とソーダ水(湯浅恵子)
増水に蛇が抱きつく細き枝(伊藤博康)
女去る金魚のやうに尻を振り(柳原白眞)
持ち帰り検討します大西日(このはる紗耶)
住む家に人の香のあるやすらけさ
夜更け帰りてひとり飲むとき(馬場あき子)
いつかまたいつかそのうち人生に
いつか多くていちかは終わる(俵万智)
倒されて案山子は天を知りにけり(横田青天子)
今までと違ふ寂しさ秋の暮(杉山一川)
庖丁の片袖くらし月に雲(其角)
惜みなく呉れて教えず茸山(伊藤宇太子)
ひとの死はやはりひとごと雲に鳥(角野良生)
極月や左手使ふ不自由さ(長崎桂子)
暮し向き質素に燈火親しめり(清永弘子)
遠見には案山子とみえて動き出す(大矢恒彦)
夜明けとはぼくにとつては残酷だ朝になつたら下端だから(萩原慎一郎)
凡句よし駄句よし宇治に赤とんぼ(清水哲男)
隙間風終生借家びととして(石塚友二)
焼鳥や恋や記憶と古りにけり(石塚友二)
菊枕してホスピスに入る積り(佐滝幻太)
さみだれの旅寝の耳の聡きかな(清水和代)
寝かねてに草紙選ばむ蟲の聲(中原道夫)
育たなくなれば大人ぞ春のくれ(池田澄子)
一切をしらんぷりする野分あと(岸本マチ子)
いささかの金欲しかりぬ年の暮(村上鬼城)
ゆびさして寒星一つづつ生かす(上田五千石)
叱られて帰る霰の石畳(桂信子)
死後などはなし凍裂の岳樺(高野ムツオ)
「嘘つき」とつぶやく間合雪おんな(宮崎斗士)
新蕎麦や静かに並ぶサラリーマン(後閑達雄)
あきかぜのふきぬけてゆく人の中(久保田万太郎)
箱寿司の箱の中より出たがらず(西村麒麟)
今日もまた死にたき母は花カンナ(矢野はるみ)
うかうかと触れてはならず夜の桃(山下敦)
一人分煮返す鍋や盆の月(小林恭子)
何もせぬ一日の締めの新豆腐(柴崎正義)
古書市に吸ひ付く人の残暑かな(清水憲一)
買物の好きな女に師走来る(星野立子) 
たまたまに三日月拝む五月かな(去来)
連絡はせぬと連絡冬籠り(金澤健)
うづみ火や我かくれ家も雪の中(与謝蕪村)
露の世に夢を見に来し一世かな(かじもと浩章)
一人づつ枯野に人を配るバス(北野みや子)
どことなくこぢんまりして鏡餅(宇多喜代子)
うるさしと言ひて母逝く桃傷む(藤井祐喜)
お気楽とよく言はれますましろ酒(関谷恭子)
芋煮会「ではそろそろ」という役目(谷茂男)
配達の終わらぬ焦り冬の暮(ヨシザネユミ)
けさよりは秋ぞと思ふシャワーかな(森哲州)
また一人消して木枯去りゆけり(モーレンカンプふゆこ)
結局は乗り遅れたる白い息(三宅久美子)
しあはせは自給自足や初暦(長谷川瞳)
人生の終わりの方の冬すみれ(池田澄子)
長き夜や二度読む本と読まぬ本(山下敦)
茶の花や微祿の武家の勝手口(日向豊雄)
問はれれば不便と答ふ秋の暮(山本裕)
気の乗らぬ夜なべの針に刺されもす(岩原和代)
生命は脳に棲むらし鶏頭花(小野寺英子)
酒やめて十日の菊となりにけり(島田孝)
春の夜の寒波の底も見えにけり(畑中史郎)
生き了るときに春ならこの口紅(池田澄子)

 


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