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巻三十三立読抜盗句歌集

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巻三十三立読抜盗句歌集

 

酒五合煙草二箱老の春(益子さとし)

税関を出て来し夫の日焼かな(千原叡子)

気儘な日続く職なき懐手(芹沢一醒)

餅に海苔餅に黄な粉や命惜し(越高飛騨男)

ビルになる大きな穴や初しぐれ(小野たけし)

厄介な妹が来る七日かな(川村智香子)

ほどほどが口癖となる極暑かな(小川洋子)

小利口な世にダボと言う鯊を釣る(高尾秀四郎)

見ぬふりをして気掛りな放屁虫(柴野志津子)

老人の余るほどをり初薬師(吉沼等外)

風呂敷に位牌を包み春霞(遠山陽子)

神棚も仏壇もなく神の留守(山内遊糸)

子規庵の素通しガラス冷まじや(高澤良一)

盆波や船渠の中の自衛艦(二又淳子)

先達のまむし拂ひの杖を持ち(坂本明子)

紫陽花の色を奪ひて雨上る(三ツ木宗一)

鮎老いて水にさからふこともなし(菖蒲あや)

衣食足り団地布団の満艦飾(高澤良一) 

手心を加へて秋の蚊を打てり(坂本昭代)

普段着で来し葛飾の菖蒲園(松井水仙)

紫陽花の疲れつぷりや夫の顔(川西ハルヱ)

若葉して光は光影は影(今橋真理子)

誰もみなはじめは風邪と思ふらし(加藤静夫)

指差せば指に乗りたる遠花火(木暮陶句郎)

日本に醤油ありけり冷奴(仲寒蝉)

ラムネ玉ころんと死んでみたきもの(馬場龍吉)

正面はここぞと決める鏡餅(安藤郁子)

裏ばかり見る癖つきぬ夜盗虫(木本晴果)

衝突(とついり)入れば散らしありけり草双子(野村喜舟)

うしろから突き落されて滝である(大畑等)

春風に脇の甘さを突かれけり(永井潮)  

あと五年耐えんや心壊れんや砂漠の旅に似るわが勤め(長尾幹也)

逃げ水や昨夜(きぞ)も厠をさがす夢(久野茂樹)

来ることの嬉しき燕きたりけり(石田郷子)

ポケットに猫を飼ひたし修司の忌(遠藤若狭男)

老木と思へぬ山の若葉かな(杉本艸舟)

点滴を連れて窓辺の冬銀河(稲垣鷹人)

待春や流るる雲に飛ぶ鳥に(深見けん二)

配偶者ほどこの冬の月近し(藤井綸)

其の時は家族葬でと生身魂(安田俊明)

過去形の男出てゆく雪の駅(鈴木光彦)

待春や私鉄の線路錯綜す(植松紫魚)

大黒の小槌の塵も師走なか(加藤耕子)

線路工夫の唄か嘆きか雪もよひ(石塚友二)

灰皿は外にあります十日夜(斉藤宜子)

足るを知る余生の新居風薫る(菊田島椿)

修羅をなす餌場に寄らず離れ鴨(西沢美恵)

野良猫との程良い間合い節分草(西田美智子)

葱刻む妻に字を聞き著者校正(河野頼人)

首尾問へばまづまづの出来松手入(高澤良一)

老いの眼に僅かにたのし青蜜柑(百合山羽公)

水すまし平らに飽きて跳びにけり(岡本眸)

四谷にて鯛焼を買ふ出来ごころ(能村登四郎)

麦の出来悪しと鳴くや行々子(高浜虚子)

菜の花や奢りの果ての売屋敷(素丸)

べら釣れば猫跨ぎとや熊野灘(柘植翠里)

夫婦して先に逝く気の夕涼み(小原紫光)

富士の風や扇にのせて江戸土産(芭蕉)

弁当を持たされ今日へ押出さる(浜野白蓬)

生涯のいま午後何時鰯雲(行方克巳)

蓑虫や思へば無駄なことばかり(斉藤空華)

魚屋の魚ぶつ切りに半夏生(谷中隆子) 

過ごし方知らぬ未熟の花の昼

春兆す子規の小庭のひとまはり(永渕恵子)

東京のホームは長し新社員(田中とし江)

束縛か絆か風船紐ついて(七田文子)

見ぬことにすれば済むこと鰯雲(柘植裕子)

護衛艦の影進みゆく春の海(瀧上裕幸) 

短夜や旅の枕の頼りなく(横田青天子) 

ため息が曲がってばかり五月闇(峠谷清広)

水の無い水差し売り場の水差しにとって水とは概念である(九るいささら)

過去よりも短かき未来春の雲(西田静子)

南風南から来たシャツを着る(園田三四郎)

淡雪や休めば死んだかと言われ(後藤渓石)

二度終へてまだきほいたつたくまきの尺八すればいよいよ太しき(湯浅真沙子)

用心に用心の蠅冬に入る(小林緑)

口はさむ余地をあたへず行々子(檜紀代)

あの声で蜥蜴食らうか時鳥(宝井其角)

働けるうちは働き柿の花(石渡旬)

どこからも死角となれる浮巣かな(森田純一郎)

あるはずと探せどあらず朴の花(森田純一郎)

燃えながら皿にとらるる目刺かな(野村亮介)

駅なかを漂流したる薄暑かな(丸茂ひろ子)

早過ぎず遅過ぎず着く大試験(岩井平八郎)

三月や道路工事の回り道(金子さと)

明暗を分けて地震あと冴返る(石橋みどり)

説明書読めど蛙の目借時(大曲富士夫)

貌のなきマネキンに乗せ冬帽子(瀬戸柚月)

山笑ふ思い出せない女優の名(成田淑美)

余れども雪にはたらぬ寒さかな(涼袋)

闇を来て闇に戻らぬ火取虫(伴明子)

ロンドンに着きは着きたれ夜半の月(久保田万太郎)

心地よき季語の数なり二百ほど(筑紫磐井)

冷汁や脱帽という褒めことば(峰良子)

化粧濃きをみなと隣る夜鷹蕎麦(内田庵茂)

桃の花弾みころげて乙女声(黄川田美千穂)

さりげなく見舞ひし夜の別れ霜(渡辺盛雄)

失ひてまた何か得てあたたかし(三村武子)

曲水に相場をつかむ気合かな(大町敏夫)

三伏の五体酸味の加わりし(山口征司)

露涼しついで詣りの野の仏(荒武蕾)

ケータイに詫びる男や蜷の道(小川軽舟)

木の葉髪帽子の中にしまひけり(上野章)

悪茄子の頓着せずに花盛り(太田土男)

夏帽子替へて遊ぶ日働く日(安原春峰)

時の日や宙に停まる観覧車(松井眞資)

囀りに耳を済ませば愚痴少し(鈴木淑生)


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