(巻二十五)如月の金の届きし書生かな(前田普羅)
三月六日金曜日
前の会社の方から久しぶりに電話を頂く。浪々の身となれば、あの頃は大事にしてくれていたなあ~と思うのである。
(散歩)
お花茶屋の職安まで歩いた。片道20分はかかる。途中で卒業式を終えたらしい女子高生のグループを認めた。ずいぶんと濃い化粧をしているなあというのが感想です。
ただならぬ世に待たれ居て卒業す(竹下しづの女)
職安のご担当がいろいろと聞きやすい方でありがたい。職務経歴書の書き方まで訊いてしまったが、教えてくれた。
履歴書までは分かるが、職務経歴書まで要るのかなとも思う。しかし、ネットで見ると世を渡るにはこれがしっかりと書けていなければいけないのだなあ。
(読書)
「人生の秋 - 小此木啓吾」文春文庫 89年版ベスト・エッセイ集 から
を読みました。一般的な秋の淋しさについて解説のあと、意外なお話をうかがった。
《そして、秋にはもう一つ別な一面がある。これはむしろ秋の入り口に起こる現象だが、それは、台風である。私たちの患者さんの中には、台風が好きという人が意外に多い。ビュービューと音を立てて風が吹いたり、大雨が降ったりする街中に、わざわざ飛び出して歩き回ったりするのが好き。あるいは、風の吹き荒れる光景をながめていると、何とも言えない快感を感じる。台風は日常、われわれが抑圧している心の中の暴力とか、破壊性を生き生きと体験させてくれるからだ。
その破壊的な体験の中には、人生のそれまでの積み重ねを一挙に投げ出したり、人との絆を壊したり、あるいは何もかも御破算にしてしまいたいという、人間の死の本能の高まりがある。 》
確かに荒れ狂う嵐をガラス越しに見ていると興奮するが、そう言う心理が働いていたのか。
《何もかも御破算にしてしまいたいという、人間の死の本能の高まりがある。》
台風の中へ覚悟のハイヒール(有坂裕子)
去年の今頃、息子の就職を喜んで、
憂いなく今が死に時ちゃんちゃんこ(駄楽)
と駄句を捻ったが、そういうことであったなあ。
今も眠るが如く逝ければと願っておりますよ。でも、そんな完璧な死に方は出来ますまい。
春愁い貰つたものの遣いかね(駄楽)