(巻二十四)勝ち負けをすぐ云ふをとこ茗荷の子(恩田侑布子)
12月31日火曜日
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予ての手筈どおりに栗きんとんを調製いたす。芋一本に砂糖を二百五十グラムも入れるのだから砂糖を舐めているようなものだ。
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南コースの散歩に出かける。午後二時近くのこの時間にしてはイートインが混んでいる。年越しの買い物に家族で来て、何となくここで昼飯にしているというファミリーたちのようだ。
珈琲を啜るあたしの横も初老の夫婦にもう若くはない娘の三人家族が座り、備えつけのオーブンや給湯器で買った弁当を温め、カップスープに湯を注ぎ、何となく不機嫌な食事をとっていた。見回してもご機嫌で食べているファミリーはなかなか見つからない。子供二人に姑らしきの五人家族が筋向かいのテーブルにいるが、どうも父親が湿っていて母親が尖っている。大晦日の場末の生協のイートインとはそんな空間なのかも知れない。
頼まれた買い物はここではせずに、別のいつもの近くの生協に回った。買い物は真鯛の刺身二百グラムほどで千二百円、雑煮用鶏肉七百円、鶏モモ七百円、他にパン、牛乳、ヨーグルト、バナナといったところだ。
締めて三千円を越えたので正月二日の福引券を一枚くれた。
年越し蕎麦にのせる天婦羅やかき揚げがしっかりと積み上げられて売らんかな、であった。しかし皆さんそんなにチャンと蕎麦なんぞを食べるのだろうか?もっとも我が家のやっていることを尺度していると世間とズレるな!
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「蕪村はグルメ - 安田宏一(医師)」文春文庫 88年版ベスト・エッセイ集 から
を読みました。結構下手物に箸をのばしていますね。